祝二〇一四 前口上


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二〇一四
新春おめでとうございます
ずいぶんとご挨拶がおそくなりました
みなさまはこの年初めを、どのようにお過ごしですか
わたしは知人である編集女史と、京都・安井金比羅宮へきています。
ここ安井金比羅宮には、悪い縁を切り、よい縁とは結ばれたいという贅沢をかなえてくれる化け物がいると聞いてやってきました
鳥居をぬけ、五分ほどを歩くと、上の写真。白い半ドーナツ型の変てこなかたまりが現れました。これがうわさの化け物です。正体は、石。
表面に幾重も貼りついた白い紙は、参拝におとずれたひとびとの願いがしるされたおふだ。「あのひとがわたしの人生から消えてしまいますように」と、しるされたものもあれば、「はやく本妻と別れますように」という、剥きだしのものも。一種ディストピアの趣ですが、純粋だともいえ、男と女がいのちを加速させながら求めあえばこうなる現実、通常運動です。
参拝にあたって、こまやかな決まりごとはなく、まんなかの穴をくぐりぬけ、石面におふだをぺたりする。これで完了あなたの願いはきっと叶います、石のわたしが祈りましょう。という全体。
どろりとした愛憎の念を、一身を賭して受容した白い化け物は、すこし息苦しそうにも見えました
そうしてわたしの切りたいご縁とは、はて。しばらく唸って考えてみたけれど浮かばない。浮かぶのは、あなた。あなたと結ばれたい。優位は切るより結ばれたい、のほうであり、おふだをあいあい傘になぞらえて「百恵/あなた」という拙筆を生みました。四つ目の写真です
のち一時間ほど遊覧をしてから、本殿に手をあわせ、そろそろ宿へもどろうとした帰りみち、聖域であるはずの境内からみえたラブホテルAOIの看板と、それにともなって漂いひろがる、ひなびた精液のにおい。下三枚の写真がそれなのですが、ここのところ夢中になっている歌川国芳の、嵐に大怪魚があらわれる「讃岐院眷属をして為朝をすくう図」(最上段の画)と、聖域+AOI HOTELの混濁ぶりがなぜかシンクロをし、複雑ながらもAOI HOTELの看板を見上げるわたしは、どこかみずみずしい気持ちでありました。
そういえば、この安井金比羅宮に関係している崇徳天皇が讃岐に流された画も、国芳が描いているのだよなあ
否定だけでおわってしまう一生はつまらない
目のまえにある愛の気配には敏感でいたい。
汚れを美化せず、時めきをはらんだ混濁をのぞみます二〇一四
みなさま本年もどうぞご贔屓によろしくお願い申し上げます

momoe